わたしの好きな本の一つに『モモ』という本があります。ドイツの作家、ミヒャエル・エンデによって1973年に書かれた児童文学で、知っている人も多いのではないでしょうか。実際、世界各国で翻訳されていますが、特に日本では人気のようで、ドイツに次いで2番目に刊行数が多いそうです。
大体のあらすじはこうです。
円形劇場に暮らす主人公の少女モモが、街に暮らす様々な人の話を聞いてあげ、関わりながら過ごしていると、「時間貯蓄銀行」を名乗る灰色の男たちによって街の大人たちの時間が奪われていってしまう。彼らに狙われてしまったモモは「時間の国」を旅し、最終的に奪われたみんなの時間を解放する。
児童文学なだけあって、平易な日本語と優しい特徴的な言い回しの文章(の翻訳)でとても読みやすいです。これ以上のあらすじはここでは割愛しますが、よかったらぜひお茶のお供にでも読んで見てください。モモがとても魅力的な少女に描かれています。
本の中では時間についてこう書かれています。
「時間をはかるにはカレンダーや時計がありますが、はかってみたところであまり意味はありません。というのは、だれでも知っているとおり、その時間にどんなことがあったかによって、わずか一時間でも永遠の長さに感じられることもあれば、ほんの一瞬と思えることもあるからです。
なぜなら時間とは、生きるということ、そのものだからです。そして人のいのちは心を住みかとしているからです。」
「時計というのはね、人間ひとりひとりの胸のなかにあるものを、きわめて不完全ながらもまねて象ったものなのだ。光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。そして、もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ」
この本をわたしが最初に知ったのは高校の英語の先生からでした。彼はとても変な先生で情熱的で冷静、信念がしっかりあって、少年のようで、好かれながらも冷やかされながらも、というような方でした。
その方がこの本を紹介してくださったのですが、そのとき、「メメント・モリ」という言葉と一緒に教えてくれました。
メメント・モリとはラテン語で
「死を忘れるなかれ」「死を思え」
という意味です。
文脈によって大きく意味に振れ幅があるのですが、先生は生きるとは死を思うことだとおっしゃっていました。(たぶん。10年も前のことなので少しあやふやですが。)
死ぬまでに私たちは何をするべきなのかと。
「限られた時間を生きるために心を富ませる」
というのをぼんやりと思ったりしています。
今年の5月はなんだか早かったような気がしました。 かわさき
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